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罠の戦争 全体の感想

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放送日・全話感想

月曜日22:00~フジテレビ系列で放送

第1話 2023年1月16日 息子が突き落される
第2話 2023年1月23日 虻川追放
第3話 2023年1月30日 犬飼親子追放
第4話 2023年2月06日 後援会長
第5話 2023年2月13日 選挙戦
第6話 2023年2月20日 鴨井の関与浮上
第7話 2023年2月27日 犯人特定
第8話 2023年3月06日 鴨井辞職
第9話 2023年3月13日 鷲津闇落ち
第10話 2023年3月20日 鶴巻引退
第11話 2023年3月27日 鷲津議員辞職

配信状況はこちらを参考にしてください↓
罠の戦争 - ドラマ情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarksドラマ

 

基本情報

シリーズ

『銭の戦争』(2015年1月)

『嘘の戦争』(2017年1月)

どちらも草彅剛さんが主演しています。ただ、シリーズとはいっても全く別の話です。復讐が題材になっていることは共通です。

 
 

脚本 

後藤紀子

シリーズ作である『嘘の戦争』・『銭の戦争』も手掛けられています。

チーム・バチスタシリーズもこの方の作品です。

競馬ファンとしても有名だそうです。

主題歌

香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」

主な登場人物

それぞれ動物の名前が入っています。

鷲津亨(草彅剛)

犬飼孝介の第一秘書。一度会った人の顔と名前を記憶している。会社が倒産し途方に暮れていたところを犬飼に拾われた。

鷲津可奈子(井川遥)

亨の妻。

蛯沢眞人(杉野遥亮)

秘書見習い。植物学を専攻しており犬飼に何らかの恨みを持っている。

蛍原梨恵(小野花梨)

元CAの私設秘書、パワハラに悩まされている。

相関図はこちら↓

相関図 | 罠の戦争 | 関西テレビ放送 カンテレ (ktv.jp)

全体の感想

リアルな政治描写

実在の政治家をモデルにしているであろうキャラクターや、実際の事件をモデルにした展開など観ていてリアルだなと思える箇所がたくさんありました。

序盤には政治家秘書がどんな仕事をしているのかをわかりやすく説明してくれましたし、永田町で日々何が行われているのかをざっくりと理解する入門として非常にわかりやすいです。

例えば2008年の作品である木村拓哉さん主演の『CHANGE』は政権交代の気配が脚本に反映されています。

一方、本作は安倍一強時代を反映していて野党の影は一切見えません。鷲津の対抗馬すら無所属でした。

何年か後に見返すと2023年前後の政治の空気感を物語るドラマとなるかもしれないですね。

権力・秩序の構造

そもそもこのドラマの発端は誰かわからない人からのもみ消しの依頼が巡り巡って鷲津にたどり着いたことにあります。

こういう権力の構造、彼らが”秩序”と呼ぶ権力者に有利で弱者は切り捨ててもよいという価値観を丁寧に描いています。

「永田町に染まる」という事象を、誰かのために役に立ちたいという志が、いつの間にか多少の強引さは許容されるべきだという傲慢さを招き、権力に憑りつかれてしまう、という風に鷲津の顛末を通して説得力のある分析をしているのがこのドラマの美点です。

女性の政治参加・現実への問題提起

主人公のストーリーとは別に、鴨井大臣や可南子のストーリーが政治から無視され虐げられた人々の代表として女性たちの物語として描かれていました。

秘書の蛍原も含めて、圧倒的男性社会の中で適応することを強いられる女性の苦悩もこのドラマの重要な要素です。

母体保護法や中絶についてなど具体的に現実社会への問題提起になっているのも良かった。

もちろん各政策に賛否はあって当然ですけど、作り手の考えをぼやかさずに描くことは大切だと思います。

女性政治家を描くときにここ10年近くは、どの作品でも小池百合子型か蓮舫型の2タイプしかありませんでした。

鴨井大臣や可南子は新しい女性政治家像といえるかもしれません。

犬飼大臣が一番面白かった

このドラマの登場人物の名前には動物が入っています。政治風刺といいますか、戯画化して見せているんだと思います。

そのかいあってキャラクターはどれも個性的で面白かったです。

でも結局のところ犬飼大臣の「わ・し・ず」が聞きたくて観ていたところがあって、第3話で退場してからはパワーダウンしてしまいました。

罠ではない

罠というのはクモの巣のように仕掛けておいて相手がそこに引っ掛かるのをじっと待つものをイメージする思います。

相手が主導権を握っている状況で「引っ掛かれ!」って手に汗握って待ち続ける展開を想像していましたが、始まってみるとこっちから能動的に相手を追い詰めているんです。

虻川ぐらいじゃないですか?罠にかかったのって。

しかもその手法が秘書による尾行一辺倒なのはつまらなかったかも。

政治家の仕事とは何か?

陳情を聞き入れてもらえなかった蛯沢の兄の話が大きな要素になっているのですが、それは本来政治家の仕事ではないんですよね。

一体政治家に何を求めているのか?政治家の仕事とは何か?について整理できていない面があります。

これはこのドラマに限ったことではなく、今の日本社会全体が政治家の役割を見失っているんだと思います。

権力に憑りつかれる側の問題をこのドラマでは描いていますが、実は権力にこびて利用しようとする側の問題もあるんじゃないかな?

『七人の侍』で農民が落ち武者狩りをやっていた場面が出てくるんですけど、誰だってただイノセントに虐げられ続けているわけではなく、ずるく立ち回るんですよね。

そして農民をずるくさせてるのは社会なんです。

そのあたりの不明瞭さや遠慮が蛯沢という存在にねじれを生じさせています。

復讐ブームは終わったのかも

『半沢直樹』が放送されたのが2013年でした。

この罠シリーズも2015年に始まっています。

当時は復讐譚がドラマのトレンドだったのかもしれませんが、10年経過し少し古臭くなってしまったのかもしれませんね。

まとめ

この作品は10年後に見返しても面白い作品だと思います。

それは本作が今の政治状況を果敢に取り込み、現在の日本が抱える社会問題や問題意識を描こうと試みているからです。

罠の戦争という復讐譚としては決してとびぬけて面白いものではないですが、日本の今を知る上で興味深い作品になっているのではないでしょうか?